――ご飯を頼む勇気がなかった夜
金曜日の夜、温かいものが食べたくて、ネパール料理屋に入った。
選んだのは「ジョルモモ」。
寒い季節に向いている料理だと聞いていたけれど、実際には一年中食べられているらしい。
運ばれてきたスープは、きれいなオレンジ色だった。
その色だけで、少し気持ちが緩む。
蒸しモモが八個、スープの中に浮かんでいる。
蒸したモモをスープで軽く煮てあるのか、皮がスープの色をうつしていて、なんだか可愛らしい。
ひと口スープを飲むと、味はしっかりしている。
チゲ鍋やスープカレーのような、輪郭のはっきりした塩味。
ニンニクと生姜、唐辛子のピリ辛さがありつつ、どこか丸い。
ゴマのような、まろやかなコクも感じる。
モモの中には弾力のある肉餡。
細かく刻まれた緑の葉っぱが混じっていて、たぶんパクチーだと思う。
よく火が入っているから青臭さはなく、肉の香りを引き立てている。
クセがなく、食べやすい。鶏肉だろうか。
熱かったので、モモをスプーンで半分に割って食べた。
スプーンにのせて、ふうふうしながら口に運ぶ。
モモとスープを交互に食べると、確かに美味しい。
でも、途中からずっと、同じことを考えていた。
ご飯、ほしいなあ。

スープの味がはっきりしているし、モモにもちゃんと味がついている。
でも、モモはご飯の代わりにはならない。
頭の中でずっと「ご飯ほしいなあ」が繰り返される。
とはいえ、これはこれだけで食べる料理なのかもしれない。
そう思って、ライスを注文するのは我慢した。
とにかく、美味しくはあった。
それは間違いない。
会計のとき、お店の人が声をかけてくれた。
「今日のは、初めてデシタネ。美味しかったデスか?」
料理を運んできてくれたときに、
私が「これ、初めて」と言ったのを覚えていたらしい。
「うん、美味しかった」
それから、思わず本音が出た。
「でも、味が美味しいから……ライス、欲しかった」
すると、その人はあっさり言った。
「あー、ライスと食べたりあるよ。ナンもあるよ。」
え。
じゃあ、頼んでも変じゃなかったのか。
日本でラーメンライスをするのと、同じことだったのかもしれない。
勇気を出さなかったことが、少し悔やまれる。
でもまあ、太らなくては済んだ、とも言える。
次は、ライスを頼むかもしれない。
取材時メモ
- 塩味はしっかり(チゲ鍋・スープカレーくらい)
- モモ8個入り
- 中身に生パクチーのみじん切り
- チキンティッカが崩れたような具あり
- 生姜・ニンニクが効いている
- 唐辛子でピリ辛、ゴマのまろやかなコク
- トマト、ピーマン
- ネパール山椒? 舌が少し痺れる
- 皮はもちもち、蒸しモモ
- 日本の餃子皮より厚く、中国の水餃子より薄い
- 旨味が濃い
- 寒い時に最適、身体が温まる
- ご飯が欲しくなる
- ライスやナンと合わせる人もいると店員さん談

